4-2-4. ITを活用した新たなビジネスの展開(デジタルトランスフォーメーション)

「攻めのIT投資」:デジタルトランスフォーメーション

業務効率化やコスト削減のためにデジタル技術やツールに投資する「守りのIT投資」だけでなく、デジタル技術を用いて、ビジネスモデルを変革したり、顧客視点で新たな価値を創出するデジタルトランスフォーメーションを推進させるため、「攻めのIT投資」を行うことが必要です。

必要な理由
ビジネス環境の急激な変化に対応するため

デジタル技術の普及により、新たな競合他社が市場に参入し、従来のビジネスの常識が変化しています。この状況下で企業がビジネスを継続していくためには、「攻めのIT投資」によって、製品・サービスの品質向上や新規開発、ビジネスモデルの変革などを行い、企業の競争力を維持および強化することが必要です。

多様化する顧客のニーズに応えるため

デジタル時代において、顧客のニーズや期待は大きく変化しています。そのため、「攻めのIT投資」によってデジタルトランスフォーメーションを推進させ、顧客視点で新たな価値を創出し、顧客満足度を高めていくことが必要です。

「攻めのIT投資」には、以下のようなものがあります。

  • 新規事業の立ち上げ、事業発展
  • 既存製品の品質向上
  • 新製品やサービスの開発
  • ビジネスモデルの変革など
進め方
手順1:経営ビジョン・戦略の策定

デジタル技術によって市場や顧客のニーズがどのように変化するのかを検討した上で、企業の存在意義や企業理念を再認識し、5~10年後の中長期的な視点で顧客にどのような価値を提供していきたいのか、ビジョンを明確にします。

手順2:変革の準備・課題の抽出

将来のビジョンと現状のギャップから、課題を抽出します。また、関係者に将来のビジョンを説明し、変革を受け入れてもらえるような意識改革を行い、全社的に取組める体制を整えます。

手順3:デジタル技術・業務改革による課題の解決

デジタル技術の活用や業務プロセスの見直し、企業文化の改革などにより、課題を解決していきます。

手順4:顧客に新たな価値を提供・他社のDXに貢献

新たな価値を創出し、顧客に提供します。さらに、サプライチェーン全体に対しても貢献していきます。

事例:某金属製作所(大阪府・製造業)

2008年の米金融危機により受注が半減し、従来の受注を待つだけの機械加工ではビジネスの継続が困難であるという危機感から、自らサービスを提供できるビジネスモデルへの転換に着手しました。自社の機械加工プロセスのデータを分析することで、新規事業の展開に繋がりました。結果、自社の経営を立て直し、自社だけでなく、他社のものづくりを担う人材を育成することに貢献できるようになりました。[11]

(出典)経済産業省 「中堅・中小企業など向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」を基に作成

手順1:実現したいことを明確にする

ビジネスモデルを、受注を待つだけでなく自らサービス提供していくモデルへ転換することに設定しました。

手順2:課題の明確化、関係者の意識改革を実施する

機械加工による製品の開発や販売だけでなく、自ら市場を開拓できるような新たな価値の創出を課題として挙げました。

手順3:デジタル技術による、課題解決

機械加工を行う機器にデータを計測するセンサーをつけ、加工データをリアルタイムで計測してデータを抽出し分析して得た情報をもとに、新規事業の展開に繋げました。

手順4:顧客に新たな価値を提供・ビジネスモデルの転換

機械加工の現場における生産性の向上や品質の改善、人材の育成などの課題を解決するサービスを提供できるようになり、受注だけに頼らないビジネスモデルを構築できました。

[11]:経済産業省. ”中堅・中小企業など向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き”. https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chushoguidebook/tebiki2-0.pdf, (2023-07-10).